フォーカス 地域の飲食店を支える
テイクアウトチャレンジ

地域の飲食店を支えるテイクアウトチャレンジ
Facebook投稿用にテイクアウト弁当の写真を撮影。写真左から北林会計と蓑幹事、晒谷会長

富山県内で最初に新型コロナウイルスの感染者が確認されたのは3月30日ですが、同じ日に志村けんさんの訃報が伝えられ、この日を境に飲食店の客足がぱったり途絶えたそうです。高岡志貴野ライオンズクラブには飲食業のメンバーが3人いて、それより前から、稼ぎ時の3月末から4月の予約が全く無くなったとか、弁当1000個がキャンセルになったとか、かなり深刻な状況を聞いていました。

クラブ会長就任に向けて、次期3役予定者で会議を開いたのも3月30日でした。今期幹事の蓑泰志さん、会計の北林和正さんと打ち合わせをする中で、地域の飲食店のことが話題になりました。「テイクアウトを利用して応援するしかない」「でも、どの店がテイクアウトをやっているのか分からないね」「それなら、Facebookに写真を投稿して情報を発信しよう」という話になり、その日の晩、Facebookに「高岡テイクアウトチャレンジ」のグループを立ち上げました。4月3日には3人が別々の店でテイクアウトの弁当を買ってグループのページに写真を投稿し、それぞれ自分の友達に参加を呼び掛けました。そのうち友達以外の人も増えていき、1週間で1000人、5月中に2500人を超えました。グループ内の年齢分布を見ると、初め多かったのは40代、50代の男性ですが、徐々に20代、30代の若い人たちも増えて、最終的には男女比も半々になっています。

テイクアウトで地元高岡の飲食店を応援する取り組みは他にもあって、ホームページに店舗情報を掲載するなどしています。Facebookを使った高岡テイクアウトチャレンジの大きなメリットは、誰でもグループのメンバーになって写真や店舗情報が投稿出来て、それが多くの人と共有されることです。投稿が最も多かったのはゴールデンウィークで、1日に80件ほどになりました。これまでに紹介された飲食店は200軒に上ります。投稿があると、その直後から店への問い合わせの電話が増えたと聞いています。今は通常営業が再開されていますが、まだまだ厳しい状況は続いているので、今後もネーミングを変えるなどして応援していくつもりです。

この活動はクラブではなく私たち3人で始めたものですが、スタートした翌週に複数の地元新聞やテレビの取材があり、高岡志貴野ライオンズクラブ有志による地域の飲食店支援として報じられました。「高岡テイクアウトチャレンジ」という名前は蓑幹事のアイデアです。実は、国際協会のFacebookページにアメリカのライオンズクラブの “Take-Out Challenge” という活動が載っているのを見て、それをそのまま拝借したそうです。投稿数が増えて成果が見えてくると、ライオンズは清掃や植樹などの労力奉仕だけでなく、こんな方法でも地域に奉仕出来るんじゃないか、と感じました。

最初の投稿をして10日目ぐらいから、隣の射水市など県内の他地域の情報も載せてよいか?という問い合わせがたくさん来るようになりました。この活動は、情報を見た人がすぐ買いに行けるのがよいところで、それには範囲を広げずに高岡に絞った方がいい。そのため、射水市については「射水テイクアウトチャレンジ」という別のグループを立ち上げて、射水ライオンズクラブのメンバーにも参加をお願いしました。

そんなことがあって、県内のクラブが同じようなグループを作ったらどうだろう、と考えました。私は昨年度、334-D地区(富山県・石川県・福井県)のGST(グローバル奉仕チーム)委員だったのですが、全国各地のライオンズクラブが「○○テイクアウトチャレンジ」というグループを作ってリンクさせれば、大きな広がりが生まれるし、ライオンズの認知度も高まるんじゃないか、と思ったんです。まずは富山県内に広げようと、黒部ライオンズクラブの三井適夫 第2副地区ガバナー(当時)に連絡したところ、すぐに「黒部テイクアウトチャレンジ」と「入善テイクアウトチャレンジ」を立ち上げてくださいました。ただ、それ以上の広がりはなかった。他にも声は掛けてはみましたが、普段からFacebookを使っている人でも、グループ管理はハードルが高いと感じたのかもしれません。そんなに難しいことではないんですけどね。

7月第2例会で高岡志貴野ライオンズクラブに入会した串道楽 潤の西野代表(左)と晒谷会長

テイクアウトチャレンジが一つのきっかけになって、高岡志貴野ライオンズクラブではドライブスルー方式の「たかおかこども食堂」を実施しました。北林会計が運営するこども食堂が新型コロナウイルスの影響で休止していたので、地元の飲食店を応援しながら、休止中のこども食堂に代わって昼食を提供しようという企画です。市内三つのこども食堂に協力してもらい、5月2日と16日の2回、それぞれ100食の弁当を配布しました。

うれしいことに、テイクアウトチャレンジは新会員1人の入会にもつながりました。私が最初に投稿したやきとり店の代表、西野兼市さんです。前から声は掛けていたのですが、この7月から仲間に加わってくれることになり、あさって15日の例会で入会式を行います。西野さんは新型コロナの影響で市内にあった2店舗のうち1店を閉じ、残る1店もまだ不安定な状況だそうです。まずは賛助会員として始めて、1年後には正会員になってもらえるものと期待しています。

新年度がスタートした今、クラブ会長としてメインと位置づける事業の準備を進めています。私はラグビーをやっていたので、昨年のワールドカップの熱狂を次の世代につないでいきたいと、日本代表のキャプテンを務めた廣瀬俊朗さんの講演会を計画しています。9月の開催を予定していて、特に地元の中高生たちに聞いてほしいのですが、今後の感染拡大の状況によっては、会場に多くの人を集めるのは難しいかもしれません。もしそうなったら、講演会をインターネット中継する予定です。困難な状況ではありますが、地域を支えるために今出来ることは何かをみんなで考え、実行しながら、新しいクラブの形、新しい奉仕の在り方を追求していきたいと考えています。

2020.08更新(取材/河村智子)


さらしや・まさかつ:1962年、高岡市生まれ。株式会社スパック代表取締役社長。2006年7月高岡志貴野ライオンズクラブ入会、20-21年度クラブ会長。