取材リポート 地元の定番イベントへ
軽トラ市でサンタパレード

地元の定番イベントへ  軽トラ市でサンタパレード

静岡県磐田市と言えばサッカーJリーグのジュビロ磐田が有名だ。ジュビロとは「歓喜」を意味するポルトガル語のジュビルとスペイン語のフビロを合わせた造語。ヤマハ発動機のサッカー部を前身とし、1997年、99年、2002年にはJ1リーグで年間優勝を果たした。このジュビロ磐田にちなみ、磐田駅北口の商店街は「ジュビロード」と呼ばれている。全長は駅前から700mほど。チームのマスコットキャラクター「ジュビロくん」「ジュビィちゃん」の像があり、歩道には選手のサインと足形、手形を焼き付けた陶板が埋め込まれているなど、ファン必見のスポットだ。

ジュビロードでは2011年から毎年3月、5月、9月、12月の第2日曜日に「いわた☆駅前楽市」と名付けられた軽トラック市が開かれている。100台以上が出店する本州最大規模の軽トラ市であり、多くの人が集まる人気のイベントだ。軽トラ市の日は磐田駅北口広場からジュビロードが歩行者天国となり、車道の両側に軽トラがびっしり並ぶ。その一方、歩道は使用せず、ただ通行したい人にも配慮している。また、17年には全国軽トラ市サミットを開催するなど、全国的にも知られた軽トラ市だ。

2019年12月8日、第36回いわた☆駅前楽市が開かれた。いつも通り100台以上が出店した今回は、サンタパレードが軽トラ市でにぎわうジュビロードで行われた。主催しているのは磐田ライオンズクラブ(鈴木富二夫会長/63人)だ。これは、一般の人から参加者を募り、サンタクロースの格好をしてパレードするイベントで、軽トラ市を盛り上げると共に、募金を呼び掛けるもの。今回が2回目となる。

クラブでは軽トラ市にも出店。収益と集まった募金は同じ静岡県内の富士宮市にある盲導犬の里富士ハーネスに寄付して役立ててもらっている。ここは盲導犬の誕生から引退後のケアまでを行っている日本初の盲導犬総合センターであり、日本で唯一、一般の人が常時見学出来る盲導犬の訓練施設となっている。

磐田ライオンズクラブがサンタパレードを実施することになったのは、愛媛県・松山城山ライオンズクラブが主催している「サンタチャレンジ」の存在を知ったことがきっかけだった。『ライオン誌』2015年2月号に掲載された記事を読み、町おこしと寄付のための資金獲得、ライオンズクラブのPRが出来るイベントのアイデアに驚いたと言う。そこで、自分たちも同じようなことが出来ないかと考え、実現に向けて動き始め、18年の12月9日、第1回目を開催した。

1回目の参加者は30人程度。軽トラ市の中をパレードし、交差点など、スペースがある場所でクリスマスソングを歌った。地元、静岡新聞に取り上げてもらい、参加者からも楽しかったと言う声が上がるなど、初回としては盛り上がった。それでもクラブとしてはもっともっとイベントを盛り上げたいと考え、今回は更にパワーアップを図って企画してきた。

県立磐田南高等学校の吹奏楽部にお願いし、前回はテープで再生していたクリスマスソングの伴奏に代わり、生演奏が付くことになった。更に駅前の北口広場で数曲演奏をしてくれることも決まった。磐田南高校の吹奏楽部は踊りながら演奏する曲も多く、聞くだけでなく、目で見ても楽しい。吹奏楽部のメンバーにサンタクロースの格好をしてもらうことでパレードも華やかになる。

当日、磐田ライオンズクラブは朝9時から野菜の販売とバザーを行う。前回は焼き芋販売だったが、今回はクラブ・メンバーが作った野菜を販売した。これが大人気。サンタパレードの受付が始まる10時の段階でほぼ完売となるほどの売れ行きだ。また、富士ハーネスから出張してもらい、盲導犬のデモンストレーションも実施。収益や募金などのお金がどこへ行くのか分かりやすくすると共に、地元の人に盲導犬を身近に感じてもらうことを狙った。

サンタパレードの参加者には無料で衣装を貸し出している。その代わり、借りた人には寄付をお願いする形にした。気軽に参加してもらおうという試みだ。昨年参加した人で早速リピーターになってくれた人も多い。

10時30分、サンタパレードがスタート。今年はクラブのPRのかいもあって去年の倍以上の70人ほどが集まった。鈴木小児科医院駐車場から駅に向けての約700mをパレードする。途中、生演奏をバックにクリスマスソングを歌う。定番のクリスマスソングに加え、磐田市のイメージキャラクターであるしっぺいのダンス「ぺぺぺい ぺぺぺい! うれしっぺい!」を披露。磐田南高校吹奏楽部の演奏はインパクトがあり、多くの人が足を止めて鑑賞した。曲の終わりに参加者みんなで「メリークリスマス!」と声をそろえると、見ていた人たちからは大きな拍手。参加者は少し恥ずかしそうにしながらも喜びの笑顔を浮かべていた。

駅前広場の吹奏楽部の演奏も含め、大盛況に終わった今回のサンタパレード。クラブとしての課題は、もっと人数を集めることだと言う。地元の季節イベントとして定着させ、サンタパレードだけでイベントが成り立つほどの規模になれば、町おこしとしては成功と言えるのではないかと鈴木会長は語る。また、軽トラ市の営業とパレードのバランスをどのように取るかが難しい課題だ。ほぼ全店舗が車道の両側に出店している構造上、人が歩ける範囲は狭い。その中で足を止めて商品を見ている人がいるため、パレードが営業妨害になってしまうのではないかという懸念があるのだ。パレードの最中に声を出すのも買い物の邪魔にならないよう、少し静かなパレードになっている。軽トラ市の人たちにもパレードにも互いにプラスになるよう実施出来る形を模索していく必要がある。

まだまだ始まったばかりで課題もあるが、多くの来場者が写真や動画を撮ったり、一緒にクリスマスソングを歌ったりと、軽トラ市の盛り上がりに一役買っていることも事実である。サンタパレードが磐田のクリスマスの定番になる日は近いだろう。

2020.1更新(取材・動画/井原一樹 撮影/田中勝明)