フォーカス玉名の町に活気を生み出す
竹灯籠の明かり

玉名の町に活気を生み出す 竹灯籠の明かり

玉名市は熊本市の北に位置していて、人口は約6万5000人です。玉名と言っても皆さんよくご存じないと思いますが、最近は玉名ラーメンとNHK大河ドラマの「いだてん」でいくらか知られるようになりました。「いだてん」の主人公で、日本人で初めてオリンピックに出場した金栗四三(かなくり・しそう)は隣の和水(なごみ)町の生まれで、玉名に婿養子に入って後半生を過ごしたんです。今年1月には市内にドラマの世界を体感出来る大河ドラマ館が開館しました。地元で愛されてきた玉名ラーメンは濃厚な豚骨スープと焦がしニンニクのトッピングが特徴で、熊本ラーメンのルーツと言われています。豚骨ラーメンと言えば博多の長浜が有名で、独特のにおいが苦手という人も多いようですが、玉名ラーメンのスープはもっと濃厚。帰省した人が必ず食べたくなるという玉名のソウルフードです。

海も山もある良い所だけど、なんとなく中途半端。そんな玉名にもっと多くの人に訪れてもらいたいと8年前に始めたのが、「玉名燈師(あかし)」の活動です。きっかけは、「熊本市の『みずあかり』のような催しが玉名でも出来ないか?」という後輩からの相談でした。毎年10月に開かれる「熊本暮らし人まつり」の「みずあかり」は、ボランティアが作った竹燈籠を並べて夜を彩る灯りの祭典です。私の本業は水道設備業で、小さい頃からプラモデルやカービングが好きで物作りが得意だったので、出来る自信はありました。そして、町づくりへの思いを共有する仲間と話し合い、誰もが参加出来る市民参加型の祭にすること、長く続けるために補助金に頼らずに運営することを掲げて、実行組織である玉名燈師を立ち上げました。

手作りの竹灯籠は懐かしい映画看板を掲げた玉名温泉街にも彩りを添えている

玉名では毎年8月に約9万人の人出でにぎわう玉名納涼花火大会が開かれますが、冬の祭はないんです。そこで冬の玉名を盛り上げようと、毎年12月半ばのクリスマス前から1月末まで「たまな粋燈(すいとう)」という催しを開いています。玉名温泉街の一角にある立願寺公園を約2000本の手作りの竹灯籠で飾り、幻想的な空間を作り出します。1カ月余りと長期間飾るので、竹灯籠の明かりはロウソクではなくLEDで照らします。

活動を始めた当初は、菊池川沿いにある高瀬裏川水際緑地に竹灯籠を灯しました。玉名はかつて菊池川流域の米の集積地だった所で、高瀬裏川一帯には船着場跡や石垣、商家の蔵が残り、その歴史を伝えています。竹あかりの舞台としては最高の雰囲気でしたが、道路から離れていて人目に付きにくかったせいか、あまり人が集まりませんでした。立願寺公園に会場を移してからは、市外から見に来てくれる人も増えてきました。公園内には「しらさぎの湯」という足湯施設もあるので、足湯で温まりながら楽しんでいる人もいます。地域の魅力は何と言っても人にあると思うので、最近はキッチンカーを出動させて、集まった人同士が交流出来る場を作っています。

竹灯籠に使うモウソウダケは、近隣の竹林から切り出したものです。私が生まれたのは有明海に面した地区で、子どもの頃にはノリ養殖の網の支柱に竹が使われていました。地域の大切な財産としてよく手入れされた竹林は、木漏れ日が美しく、風が吹き抜ける気持ちのいい空間でした。しかし、樹脂素材の支柱が使われるようになって竹の需要が大きく減ると、竹林は放置され、荒れ放題になっていきました。そんな荒れた竹林から竹を切り出すのは大変な作業です。山麓にある竹林は車で近づけない所も多く、蚊に刺され、ヘビにおびえながら密生した竹を数人掛かりで引き倒して、平地まで運び出しました。今は森林組合の協力で竹を提供してもらえるようになりましたが、始めた頃は本当に苦労しました。

灯籠のデザインは私の担当で、パソコンの作図ソフトを使って作成しています。玉名の市花のハナショウブや、夜空の星、日本の伝統柄などを取り入れてオリジナルのデザインをいくつも考案しました。穴のサイズや配置によって遠近感を出したり、錯視効果で図柄が動いているような表現を演出します。昨年は「いだてん」にちなんで、走る金栗四三をモチーフにした図柄も作りました。誰もが参加出来る祭であることを大切にしているので、灯籠作りは特殊な工具も技術も必要ない形にしました。図柄を印刷した紙を竹に貼って電気ドリルで穴を彫るだけで、誰でも簡単に作れます。私たちの活動が新聞などで紹介されるようになると、竹灯籠の作り方を教えてほしいという依頼が来るようになりました。玉名市内には五つの高校がありますが、そのうち3校から依頼を受けて竹灯籠づくりを指導し、出来上がった生徒たちの作品もたまな粋燈の会場に飾っています。

町おこしには、玉名商工会議所の活動を通じて以前から取り組んできました。10年前、青年部の会長を務めていた時に始めたのが、小学生に対する起業教育です。福島県の会津若松商工会議所青年部が考案した「ジュニアエコノミーカレッジ」を玉名でも取り入れ、小学5、6年生に企業経営の模擬体験をしてもらう事業で、現在も続いています。また、商業委員長の時には「玉名かるた」を完成させました。子どもたちに郷土の魅力を知ってもらうために歴史や文化、自然、人物を読み込んだ郷土かるたで、詠み句は一般公募を行い、絵札は玉名市が行ったフォトコンテストによって選んで制作しました。

まだ一つのアイデアですが、今考えているのは、日本赤十字発祥ゆかりの地にまつわる活動です。現在の玉名女子高等学校がある場所は、西南戦争当時に政府軍の仮県庁が置かれた所で、ここで日赤の前身である博愛社設立の打ち合わせが行われたと伝えられています。そうした関係もあって、玉名女子高は看護教育に力を入れています。玉名には九州看護福祉大学もありますから、学校と日赤、そして献血で深いつながりがあるライオンズクラブが協力して、何か出来ないかと考えています。玉名で生まれ育った子どもたちが地元を離れたとしても、また帰ってきたいと思うような町にしたい。地域のいろんな団体と連携しながら、活気ある町づくりを続けていきたいと思います。

2019.10更新(取材・構成/河村智子)

あおき・としひろ 1961年1月玉名市生まれ。久留米工業大学卒業。青木設備代表。町づくりグループ・玉名燈師代表として、手作りの竹灯籠で夜を彩る「たまな粋燈」を開催するなど、玉名の活性化に取り組んでいる。16年4月玉名ライオンズクラブ入会。2018-19年度337-E地区3ゾーン・ゾーン幹事。