テーマ街をアートで彩るイベント
長岡芸術工事中2019

街をアートで彩るイベント 長岡芸術工事中2019

11月3〜4日、長岡市の中心街で「長岡芸術工事中2019」という、ちょっと変わった名称のイベントが開催された。主催は長岡悠久ライオンズクラブ(長部善憲会長/71人)と長岡造形大学(和田裕学長)で、長岡市と、ながおか・若者・しごと機構が共催、商工会議所や商店街振興組合、マスコミ各社が後援に名を連ねていた。

これは2014年に、長岡悠久ライオンズクラブが仲介役となって、長岡造形大学の学生と長岡駅前商店街を引き合わせたことが、そもそもの始まり。この時、ライオンズでは「デザイナーや芸術家を志している若い世代の作品発表の場の創出」「市民が何気なく芸術を鑑賞出来る場の提供」「地域文化の向上と活性化」の三つの狙いを持っていた。そして三者協議の結果、「長岡の中心街をアートで彩ろう」と、長岡の街全体をアートの展示場に見立てた初の試み「ヤングアートディスプレイin大手通2015」が、15年3月21日から4月12日まで開催された。

第1回となるイベントは長岡悠久ライオンズクラブが主催し、長岡造形大学は共催という形で実施。事業規模は約91万円で、長岡市市民活動推進事業補助金62万4000円と、長岡悠久ライオンズクラブの事業資金などで賄った。会場は長岡駅前の大手通商店街で、長岡造形大学の学生たちが街並みや店舗に沿って作品を展示し、併せてパフォーマンスやワークショップ、カフェなどさまざまなプログラムを3週間にわたって展開した。

第1回となる「ヤングアートディスプレイin大手通2015」

「前々から長岡にはいくつもの財産があると感じていました。大学や商店街といった財産同士が結び付くことで新しい何かが生まれるはず、という好奇心がこの取り組みの始まりです。その後、第1回のヤングアートディスプレイから、翌年にはヤングアート長岡、そして現在は長岡芸術工事中と名称を変更し、内容も参加者も変わってきています。その中で変わらないものが二つ。それは長岡をアートいっぱいの街にしようという目的と、事業の主役は学生だということ。事業が成功するかどうかは、学生の皆さんが明るく楽しく活動してくれているかどうかにかかっています」
と、事業の発案者で今年度クラブ会長を務める長部会長は語る。

これを受けて、長岡市大手通2丁目商店街協同組合の野本九萬雄理事長も、「このイベントによって、学生の皆さんの若いエネルギーが長岡の街の活性化に生かされることを期待していますし、こうした機会を与えてくれた関係者に感謝しています」と話していた。

長岡造形大学卒業生が時間を掛けて構築してきたアートスペース「庭と窓」(すずらんエリア)

このイベントは長部会長が説明していたように、第2回目は「ヤングアート長岡2016」としてエリアを広げて開催され、学生だけではなく卒業生も参加した結果、参加者数は前回から倍増、作品数は3倍増となった。それに合わせて事業規模は第1回目の倍近い約173万円になり、長岡市市民活動推進事業補助金92万円を得て実施した。

更に2017年にはライオンズクラブの年度替わりである7月を挟んで、春に「ヤングアート長岡2017」、そして秋に「ヤングアート長岡芸術工事中」を開催した。この年から、長岡悠久ライオンズクラブと長岡造形大学の主催、長岡市、ながおか・若者・しごと機構の共催という体制が確立。これらに商店街振興組合が加わって実行委員会を組織すると共に、長岡造形大学の学生有志が学生実行委員会を作り、その年の企画・運営に当たっている。また、「芸術工事中」の名称が付いた第4回からは、それまでの3回のイベントをベースに、長岡造形大学の学生・卒業生・教員、ゲスト・アーティストや地元の芸術家などがコラボレーションした複数のプロジェクト(展示・公開制作・イベント)が同時進行するスタイルで開催するようになった。

民家をリノベーションしながら制作活動をする卒業生・不破妙子さんの「ふわアトリエ」(渡里町エリア)

昨年は名称自体を「長岡芸術工事中2018」と変更し、アートの展示を芸術の工事現場に見立てて、市民が街中を回遊しながら、芸術に触れてもらうスタイルにした。そのコンセプトは今年の「長岡芸術工事中2019」でも受け継ぎながら、前回初めて実施したギャラリーツアーを充実させ、実行委員会の学生がツアー添乗員となって、説明をしながら各会場を回り、それぞれの展示スペースでは来場者が出展者から作品に込めた思いや制作工程などを直接聞くことが出来るようにした。

「今年は学生が会場を案内するギャラリーツアーに重きを置き、『芸術工事安全確認ツアー』として、2日間で7回実施しました。普段、展示を見る際にアーティストから直接、作品のコンセプトなどを聞ける機会はなかなかないので、お越し頂いた方にも楽しんでもらえました。また、今回は楽しく拠点を回ってもらおうという狙いでスタンプラリーを企画しましたが、たくさんの方にご参加頂き、スタンプを探しながら回って頂いたので、より楽しめたかと思います」(長岡芸術工事中2019学生実行委員会・川俣直子実行委員長)

学生の作品が展示された「ショップイン大手」でパフォーマンスをしながら公開制作をするグループ(大手通エリア)

「長岡芸術工事中2019」は、もともとのスタート地点である大手通エリア、長岡駅前のすずらんエリア、信濃川に近い渡里町エリアの三つのエリアに、ビル全体が会場となる第一安達ビルや、築40年の4階建てアパートを住民やその仲間たちでリノベーションしシェアハウス兼アトリエとして活用する「416 STUDIO WATARIMACHI」など8カ所の拠点が設けられ、それらを展示会場として開催された。これらの中には、416 STUDIOのように、学生や卒業生、先生たちなどによって、まさに「工事中」の拠点もいくつかあり、当初の「ディスプレイ」から進化し、アートが街に根付いてきていることを物語っている。

長岡造形大学の和田学長はその辺りを踏まえ、
「このイベントを継続する中で、アートの拠点が長岡の街中に出来つつあります。今回はそれらを核としてギャラリーツアーが開催されましたが、これを機に、拠点の中だけではなく拠点から外に出て行くような動きが生まれれば、長岡の街が更にアートの街としてうらやまれるようになるのではないかと期待しているところです」
と話していた。

2019.12更新(取材/鈴木秀晃 写真・動画/宮坂恵津子)