取材リポート 飼育を続けて30年
ホタル祭り開催

飼育を続けて30年 ホタル祭り開催

6月8日から9日にかけて、千葉県長生郡白子町でホタル祭りが開催された。主催しているのは白子ライオンズクラブ(井田勝彦会長/11人)。会場は白子町第3クリーンセンターに隣接している公園だ。ここにクラブがホタルの里を作り、ホタルを育てている。

第3クリーンセンターは町が運営する下水処理施設だ。ホタルは水が奇麗なところにしか育たないという特性を利用し、町の浄水処理によっていかに水が奇麗になっているかをアピールする意味も込めてこの場所を選んだ。そして毎年6月に地元の人たちが楽しめるよう、ホタル祭りと称したホタル鑑賞会を実施している。

ホタル飼育のための募金も実施している

ホタルの里はクラブの手作りだ。パイプを組み合わせて水を引き、ホタルの餌になるカワニナも育てている。もう30年も続けているが、昨年は設備の老朽化が目立ち、初めてホタル祭りを中止した。クラブとしては断腸の思いだった。

そして今年。必ずまたホタル祭りを開催するぞとの思いから、業者を入れてフェンスの補修なども実施した。だが、会員数が少ないクラブにとって、資金の捻出は大きな課題だった。そこで白子町の特産物である玉ねぎに目をつけた。白子の玉ねぎは肉厚でみずみずしく、辛味が少ないことで知られており、生でもあっさりと食べられる。毎年4月から5月にかけて全国でも珍しい「玉ねぎ狩り」が体験出来るため、多くの人が白子町を訪れる。

施設の改修に加え、ホタルを育てるには資金が必要となる。クラブはこの玉ねぎ狩りで資金を獲得しようと考え、4万個の玉ねぎを植えて育ててきた。そして4月27日から5月6日。改元を挟んだ10連休の際に毎日玉ねぎ狩りを実施した。一般のお客さんが数多く来場し、用意した4万個の玉ねぎはほぼ全て収穫してもらうことが出来た。評判は上々。来年の実施を求める声も多く上がった。

クラブはこうして得た資金を元にホタル祭りの準備を進め、いよいよ当日を迎えた。だが、天気予報は大雨。雨が降ってしまうとホタルが飛ばないため、例年なら公園の敷地に所狭しと並ぶ屋台の多くが開けることを諦めて早々に帰ってしまった。開店したのは2店のみ。準備段階では「祭り」と言うには少し寂しい光景に見えた。

だが、幸い雨が降ることはなく、地元白子を拠点に活動している太鼓衆「楽」の演奏が始まると、人がどんどん集まってきた。29回目を数えるホタル祭りの知名度と人気の高さを感じさせた。

ホタル祭りの来場者は平均1500人(2日間)。迷惑がかからないよう、ホタル祭りの内容を近隣の住民に説明している。また、近隣の会社などに駐車場としての場所提供等の協力もお願いしている。当日は警察と協力し、祭り会場にアクセスする道路を一方通行にし、交通面でも混乱が起きないようにする。駐車場、交通整理員の確保もクラブの仕事だ。

ホタルの鑑賞会だけでは人が集まりにくいため、クラブでは前述の太鼓衆「楽」のような団体に依頼。演奏などで来場者を楽しませる工夫をしている。また、祭りを盛り上げるため、クラブではじゃんけん大会を実施している。90人の子ども限定のイベントだが、開会式後に配布した整理券はすぐに無くなってしまうほどの人気だった。

日が落ちてホタルの里が開放されると、すぐに長蛇の列が出来た。クラブ・メンバーは入り口と出口でドアの開け閉めをする。ホタルが外に出て行ってしまわないようにするためだ。

ホタルの里は天井を含め、フェンスで覆われている。中心にホタルが育てられている水場があり、来場者はその周囲に作られた足場をフェンスに沿って歩いていく。壁となっているフェンスには暗幕を張り、天井部分は光が入るようにした。月明かりや周囲の明かりが天井部分から入ることで、足元は思いの外明るい。一方で壁の部分は黒いため、ホタルの発する光が見やすくなっている。

ここ数年で一番飛んでいると言うメンバーの言葉通り、ホタルの里に入ると多くのホタルが出迎えてくれた。子どもたちは飛び交う光を見て歓声を上げ、見終わるとすぐに列に並び直してもう一度見ようとする人も多かった。

祭りの終わりまで、ホタルの里の入り口に続く列は途切れることがなく、多くの人がその幻想的な景色に酔いしれていた。大雨予想も外れ、祭りの間は、少しぱらつく雨が短時間降った程度。クラブが心配していた人出も多く、ホタルもたくさん飛ぶなど大成功に終わった。

2019.07更新(取材・動画/井原一樹 写真/関根則夫)