取材リポート 小児がん患者を支援する
チャリティー茶会開催

小児がん患者を支援するチャリティー茶会開催

東海環状自動車道の美濃加茂インターチェンジから車で1分の距離に、ぎふ清流里山公園がある。正式名称は平成記念公園というこの都市公園は、2003年4月に日本昭和村という愛称で作られた。昭和30年代の里山をイメージしたレトロテーマパークとして誕生し、道の駅・日本昭和村を併設する人気施設だった。名誉村長には女優の中村玉緒さんが就任し、以後、年に一度は来村している。昭和期に実際に使われていた製品が展示され、当時の家屋なども移設されている。体験教室も豊富で、1日いても飽きない場所だ。昨年4月に現在のぎふ清流里山公園と愛称を変更し、入場料が無料となった。道の駅日本昭和村も「道の駅みのかも」と名前を変えて新たなスタートを切った。遊具や足湯の施設などが新設され、謎解きのイベントが実施されるなど、県内外の人々が集う人気スポットだ。

3月10日、ぎふ清流里山公園で美濃加茂ライオンズクラブ(今井邦子会長/127人)の主催するチャリティー茶会が実施された。クラブにとっては初めての試みである。茶道裏千家の正教授である今井会長の提案で、今年のクラブ・テーマ「和の心」を市民や青少年と共有したいという思いから企画された。

美濃加茂ライオンズクラブでは木曽川河川環境整備、小学校への読みきかせ本寄贈、薬物乱用防止教室を市内小中学校11校で開くなど継続事業を多く実施している。今回はライオンズクラブ国際協会が重点分野としている小児がんに着目。医師である山田実貴人福祉委員長が発案し、チャリティー茶会の収益は県内で最も小児がんに力を入れている医療機関である岐阜市民病院が実施している小児がん病棟に家族と交流出来るスペースを作る、「こどもの森プロジェクト」に寄付される。

今回のチャリティー茶会ではあじさい工芸館と能楽堂に1席ずつ茶席を設けた。工芸館内はクラブのメンバーが担当する会員席、能楽堂はボーイスカウトや、クラブが薬物乱用防止教室で訪れる加茂高校茶道部の生徒たちなどが担当するジュニア席とした。

会員席を担当するメンバーは茶道の稽古に通い、知識を深めてこの日を迎えた。亭主になったり、お茶をたて、それを運んだりと大忙し。それ以外のメンバーも混雑するお客さんを誘導したり、靴の整理をしたり。初めての試みで慣れないことばかりだが、来場者に良い思い出を作ってもらおうとそれぞれが奮闘していた。あじさい工芸館内には美濃加茂ライオンズクラブの活動を文字と写真で紹介したパネルも展示。多くの人が訪れるこの機会を利用してライオンズクラブのPRにも余念がない。

今井会長がこだわったのが「誰もが楽しめるお茶会」にすることだ。作法を気にしすぎてお茶をおいしく味わうことが出来なければ本末転倒である。茶会に初めて来る人でも楽しい体験となるよう、一般の人にも馴染みがある「百人一首」をテーマとして選んだ。茶器や掛け軸も百人一首にゆかりのあるものを選び、メンバー自らがそれにまつわる話をすることで、興味を持ってもらおうと考えた。また、本来は炉の季節であるが、会員席もジュニア席も全ていすに座って茶を楽しむ立礼(りゅうれい)席に設定。足の悪い人や正座に慣れていない子どもたちも気軽に参加出来るよう工夫した。また、普段病院で小児がんと闘っている子どもたちも招待し、茶会を楽しんでもらった。

国際協会がフレームワークの一つとして取り組んでいる小児がん。これを受け、美濃加茂ライオンズクラブではこの日、岐阜市民病院小児科の篠田邦大医師を招いて無料講演会「小児がんについて」も実施した。今回のチャリティーの目的である小児がんについて、基礎的な情報を提供し、地域の方に支援の必要性を理解してもらうためだ。小児がんは大人のがんに比べて、関心が薄いのが現状であるが、水泳の池江璃花子選手の白血病告白などによって若年層の病気が注目されるようになってきた。小児期のがんで最も発症が多いのがこの白血病だ。厳密に言えば、池江選手は小児がんの定義(15歳以下)に当てはまらないが、今、この時期に講演を聴いてもらうことに、クラブとしては意義を感じている。

小児がんの場合は患者本人だけでなく、家族の負担も大きく、病気そのものへの対処に加えて、本人、家族への精神的ケアや患者の勉学に対するフォローなど、より広い範囲での支援が必要となるケースが多い。こうした現状をまずは知ってもらうことで支援の輪が広がりやすい環境を作るのが目的だ。篠田医師の講演は基礎知識の伝達に加え、患者が退院する際のエピソードなど、医師ならではの実体験を交えた内容で、参加者は熱心に聴き入っていた。今回の小児がん講演会については他のライオンズクラブからも関心が高かった。国際協会のフレームワークである小児がんについて、どのような事業を実施すればいいのか、参考にしようと他のクラブから多数のクラブ会長が参加していた。

今期は今井会長の得意分野である茶道との組み合わせで実施した小児がんに対する事業。来季以降も小児がんについて継続してクラブで取り組み、困っている人に手を差し伸べていくつもりだ。また、美濃加茂ライオンズクラブでは糖尿病予防のためのお弁当作りも実施。糖尿病も小児がんも国際協会のフレームワークの一つであり、支援のニーズが多い分野だ。会員それぞれが知識を深め、ニーズに対して、地域住民と一体となってさまざまな奉仕活動をしていきたいと考えている。美濃加茂ライオンズクラブでは、既存の事業を大切にし、かつ新たな奉仕分野への挑戦を続けていく。

2019.04更新(取材・動画/井原一樹 写真/関根則夫)