奉仕活動特別養護老人ホームで
そば打ち昼食会

特別養護老人ホームでそば打ち昼食会

上士幌(かみしほろ)町は北海道中部、大雪山国立公園の東山麓にあり、町域の約76%を国立公園と国有林が占める自然豊かな町だ。士幌という地名は、「広大な土地」を意味するアイヌ語の「シポロ」からきており、そんな土地柄を生かした畑作や酪農などの農業が盛ん。また、源泉かけ流しのぬかびら源泉郷や、日本一広い公共育成牧場のナイタイ高原牧場、北海道遺産となっている旧国鉄士幌線のコンクリートアーチ橋梁群など、観光面でも注目が集まっている。

旧国鉄士幌線コンクリートアーチ橋梁群の一つタウシュベツ川橋梁は限られた季節だけ姿を現すため「幻の橋」とも呼ばれる

帯広を起点とする旧国鉄士幌線は1926年に上士幌までが開通。39年には上士幌以北も開通し、糠平(ぬかびら)など北部の観光・森林・電力開発が進展して人口が急増し、55年には約1万3700人の町民が暮らしていた。その後、徐々に過疎化の波が押し寄せ人口が減少。ピーク時から60年が経った2015年には4800人台まで減ってしまった。が、ここ3年で再び人口が増え始め、現在では5000人台まで回復している。

これは町が、都市部からの移住者や二地域居住者の誘致に力を入れ、転地型テレワーク、花粉症疎開ツアーなど、先進的な定住施策を実施するなど、健康・環境・観光と子育て・教育をコンセプトにした町づくりを進めた結果で、北海道十勝管内19市町村で人口が増えているのは唯一、ここ上士幌だけとなっている。しかも最近は出生率も上がっており、高齢化率は35.2%と高いものの低下傾向にあるという。

上士幌町にライオンズクラブが誕生したのは1970年のこと。夫婦そろっての活動がクラブの伝統で、結成時から家族ぐるみで地域に根差した奉仕を展開すると共に、地区年次大会などライオンズのイベントにも夫婦同伴で出席するのが恒例となっている。

18年11月22日には、上士幌ライオンズクラブ(千葉与四郎/17人)のメイン事業の一つ、特別養護老人ホーム「すずらん荘」でのそば打ち昼食会が実施されたが、ここにも当然、ライオンズのメンバーと共に活動する夫人たちの姿があった。

すずらん荘に対しては、87年の開設当初から、季節ごとに行われる施設の行事などで、さまざまなサポートを実施。夏祭りの盆踊りでは、上士幌ライオンズクラブのメンバーの手でやぐらを組んだり、発電機を持ち込んで提灯や屋台の電源をセットしたり、裏方としてイベントを支えている。

そば打ち昼食会は、92年から実施している継続事業。01年までは餅つきも一緒に行っていたが、すずらん荘に加えデイサービスセンターやグループホームなど、施設の事業拡張が続き配食数が増えたため、02年からはそば打ちに絞って実施している。

そばはタンパク質や脂肪、ビタミン、ミネラルなど、健康を維持するために必要な成分を豊富に含んでおり、お年寄りにはもってこいの長寿食。また、上士幌町のある十勝地方は開拓期からそばが栽培されてきた長い歴史があり、お年寄りにとってはなじみ深い食事だ。しかも、日本を代表する穀倉地帯である十勝平野でとれるそばは、風味豊かで品質が高いことで知られる。上士幌ライオンズクラブのそば打ち昼食会には、そんな地元十勝産の新そば粉が使われる。

「ひきたて、打ちたて、ゆでたての、いわゆる『三たて』が、おいしいそばの条件と言われますが、そば打ち昼食会では収穫したての新鮮なそば粉を使って『四たて』のそばを堪能して頂くようにしています。私自身も、年越しそばを打って親戚に配ったりしますが、メンバーの中には町のそば打ち名人と呼ばれるようなベテランも何人かいます。毎年、そうした方たちを中心に、会員夫人の協力も得ながら、クラブ一丸となって作業を行っています」
と、千葉会長は話す。

すずらん荘と同じ敷地には、系列のデイサービスセンターやグループホームなど七つの施設がある。そば打ち昼食会では、これらの利用者分も含め、毎回150食ほどのそばを打ち、ゆで上げる。施設の昼食時間に間に合わせるため、最初の水まわしだけは機械を使うが、生地を中に練り込む菊練りや空気を押し出しながら玉を円錐形に整えるへそ出しなど練りの工程からは全て手作業。ベテランは、打ち粉をふりながら、慣れた手つきで麺棒を操り、生地をのしていく。のしが終わると生地がつかないよう打ち粉を多めにふり、丁寧に折り畳んで、そばを切っていく。切ったそばは、ゆでる時に取り出しやすいよう一人前ずつ軽くひねってばんじゅうに移す。

26年もの継続事業だけに、朝9時半に集合したライオンズクラブのメンバーと夫人は、軽いあいさつを交わした後、さしたる打ち合わせもなしに、これらの作業をてきぱきとこなしていく。そばは、見る見るうちに出来上がり、作業をしていたホールの隅に、打ちたてのそばが入ったばんじゅうが積み上げられていった。

この活動は、入所しているお年寄りの目の前で、かつて自分たちもやっていたそば打ちや餅つきを実演することにより、昔を懐かしんでもらいながら、おいしい食事を共にしようという企画。中には昔取った杵柄とばかり、そば打ちに参加するお年寄りもいて、ライオンズのメンバーやメンバー夫人のサポートを受けながら、楽しそうに作業をする光景も見られた。

打ち上がったそばは、ホール隣の施設の厨房で、やはりメンバーたち自らがゆでて仕上げる。めんつゆと天ぷらは施設側が用意し、それぞれの施設の昼食として、入所者や利用者のお年寄りに提供された。そば打ちにも参加した男性は、あっという間に完食。そばつゆまで奇麗に飲み干して、「ああ、おいしかった!」と声を上げていた。

2019.01更新(取材・動画/鈴木秀晃 写真/田中勝明)