取材リポート 大活字本寄贈のための
ブックフェア

大活字本寄贈のためのブックフェア

11月10日、尼崎市立北図書館で尼崎琴の浦ライオンズクラブ(木下昌広会長/16人)が主催するチャリティー・リサイクルブックフェアが開催された。市民の方々が持ち寄った不要な本を集め、それを来場者に持ち帰ってもらうブックフェア。毎年約5000冊が集まり、400人ほどが来場する人気のイベントだ。今年も13時の開場前から多くの人による列が出来た。会場は3階だが、列は階段にまで伸びていた。

この日は翌11日に市長選の告示を控えた稲村和美尼崎市長が開会に駆け付けた。市長のあいさつが終わればいよいよ開場だ。来場者はメンバーや図書館職員の案内に従って、おのおの目当ての本のコーナーへと向かう。

メンバーは募金の案内をしながら、足りなくなったところに本を補充していく。本好きが集まるだけあって、みるみる本が無くなっていく。残念ながら募金に協力してくれない人もいるが、中には子どもにお金を持たせて募金させる家族連れも見受けられた。募金箱の隣にある大活字本のサンプルに目を留めてメンバーに話し掛ける人もいるなど、啓発活動としても効果のある事業となっている。

尼崎琴の浦ライオンズクラブが最初にリサイクルブックフェアを実施したのは1979年のことだった。当時の会長が古本のリサイクルを事業に出来ないかと考えていたことと、当時の幹事が視聴覚に関わる仕事をしていたことが結びついた。リサイクルブックフェアで募金をしてもらい、そのお金で図書館が必要とする大活字本を寄贈しようという取り組みだった。その後、1989年からは毎年1回実施する現在のスタイルが確立。以後、継続している。今までに寄贈した大活字本は延べ1000冊を超えた。大活字本だけでなく、書架やオーディオブックを贈ったこともあり、尼崎市立北図書館にはライオンズの寄贈したものが「尼崎琴の浦文庫」としてまとめられている。

かつては市報に本の引き取りを告知し、メンバーがトラックで回って本を回収することもあった。回収した本があまりにも多く、トラックが動かなくなってしまったこともあったという。また、尼崎市出身でアニメ「忍たま乱太郎」の原作者である尼子騒兵衛さんにサイン会をしてもらったり、来場した子どもに風船を配ったりとさまざまなイベントも実施してきた。現在では来場者数もリサイクルされる本の冊数も安定してきたため、こうしたイベントは実施していないが、来場者や自転車の整理、看板の設置など、メンバーが汗を流して運営している。

大活字本を寄贈している北図書館からは非常に感謝されている。大活字本は出版点数が少なく、物にもよるが、1冊が2000円、3000円してしまうなど通常の本と比べると高額になる。また、大きな活字が使われている分、ページ数も多い。元々は1冊の本が数冊に分かれることがほとんどだ。これらを個人で所蔵するには金銭的にも家のスペース的にも難しい。そのため、大活字本の収蔵は図書館の重要な役割だと北図書館の山下照代館長は語る。弱視になってしまった本好きの人からも、大活字本によって、また以前のように読書を楽しめるようになったと好評だ。北図書館でもライオンズクラブから寄贈された募金で出来るだけ多くの大活字本を購入するべく、通常は業者に委託する本のコーティングも全て図書館内で行うなど、努力をしている。

来場者から大好評のブックフェア。「昔から欲しかった本がここで偶然見つかった」といったうれしい反響もある。亡くなったおじいさんの本を「皆さんの役に立つなら」と寄贈してくれたおばあさんもいた。さまざまな人の思いの上でリサイクルブックフェアが開かれている。若者の活字離れが叫ばれて久しいが、ブックフェアには子どもたちも多く訪れている。絵本や児童書は子どもの成長によって不要になることも多い。これらのリサイクルとしても良い機会となっている。

本のリサイクルに加えて、資金獲得から寄付の流れが確立されており、同時に市民の方々にライオンズのPR、大活字本についての啓発も出来るこの事業。尼崎琴の浦ライオンズクラブではライオンズクラブに適した事業だと考えており、今後も末長く継続して行く予定だ。

2018.12更新(取材・動画/井原一樹 写真/関根則夫)