取材リポート 仮装パレードの復活で
久居の町を華やかに

仮装パレードの復活で 久居の町を華やかに

「ハチ公前でハロウィン仮装」と聞けば、その喧騒が毎年ニュースで取り上げられる東京・渋谷が思い浮かぶが、今回は三重県津市の話。忠犬ハチ公の飼い主の上野英三郎博士が津市久居元町の出身であることから、近鉄久居駅東口には博士とハチ公の銅像があり、市民が憩う公園が整備されている。この緑の風公園を舞台に10月21日、久居ライオンズクラブ(藤谷増郎会長/91人)が主催する久居ハロウィンパレード、通称「ひさハロ」が行われた。

ひさハロは、この地域の秋祭り「久居まつり」のイベントの一つ。本会場となる久居二ノ町と久居本町周辺には、市の特産品や各種団体のPRブースなどがにぎやかに立ち並び、各種イベントが目白押し。駅前に集まったひさハロ参加者は、仮装コンテストのアピールタイムを済ませた後、約1km先にある本会場のメインステージまでを仮装姿で練り歩く。

一昨年の2016年は、2市5町村が合併して出来た新しい津市の誕生からちょうど10年。旧久居市を活動エリアとしている久居ライオンズクラブとしても、節目の年の久居まつりを大いに盛り上げたいと考えた。子どもから大人まで幅広い世代が共に楽しみながら、久居という町により愛着を持ってもらえることはないかと模索していた。

「この辺りで子どもから大人までワクワクするイベントと言えば、自衛隊による仮装行列でした。久居まつりの定番で、私自身も子どもの頃楽しみにしていましたが、いつの間にか行われなくなっていました。ならばと、同じ時期の仮装イベントであるハロウィンにヒントを得て、かつての仮装行列を復活させることを思い付きました」

そう話すのは、同クラブ地域活性化委員会の小林英紀委員長。こうして始まったひさハロだったが、昨年は台風接近のため久居まつり自体が開催中止に。2年ぶり2度目の開催となった今回は、夏を思わせる暑さの中でのパレードとなった。

12時45分の受付開始時間を待たずに、緑の風公園に仮装姿の参加者が集まりだした。多くは、パレードに先立って行われる仮装コンテストの参加希望者だ。公園に設置されたステージの上に立ち、審査員に仮装のポイントなどをアピール。上位者はパレードの後、久居まつり本会場で表彰される。審査員は久居まつり実行委員会会長や津市教育委員会教育長、久居ライオンズクラブの藤谷会長ら5人の他、仮装姿の津クイーン3人が特別審査員を務めた。審査項目は三つ。ファッション性とアピール度、クオリティーと完成度、工夫・アイデアをそれぞれ5段階評価。合計点数が最も高い「ベストオブひさハロ」を含む上位5チームが入賞となる。

定番のカボチャや魔女、犬や猫などの動物、映画や童話の主人公、アニメやゲームのキャラクターなどに扮した参加者が次々とステージに上がると、審査員の表情もその都度真剣になる。会場のあちらこちらから、ステージ上の仮装についての感想が聞こえてくる。台風で中止になった昨年も出場を希望していたという参加者も少なくなく、1年越しの披露に皆満足そうな表情を浮かべていた。


 
コンテストが終わるといよいよパレードの時間だ。コンテストと違って、こちらは仮装していれば参加は自由だ。飛び入り参加する人のために、クラブでは数に限りはあるが衣装も用意した。14時30分、音楽が鳴り響く中、横断幕を先頭に仮装姿の270人が久居の街中を行進し本会場を目指した。

ゴールの後、参加者全員にお菓子とカボチャが手渡され、コンテストの入賞チームには、ライオンズ自ら田植えをし刈り取り、はざかけした「ライオンズはざかけ米」や、ご当地三重県のブランド牛、松坂牛などが贈られた。

「パレードのルート上にお住まいの方々が『昔の仮装行列を思い出す』と喜んでくださったり、前日の準備段階から『地域を盛り上げ続けてほしい』と応援の言葉をくださったりと、市民の皆さんからはおおむね良い反応を頂いています。久居まつりを盛り上げるために、他の団体も神輿や郷土芸能などを行っていますが、ゆくゆくはこうした催しと連携して大パレードが実現出来ればより華やかににぎわうのではないかと思います。地域の方々がもっともっとこの町に愛着を持って頂けるようこれからもがんばります」(小林委員長)

ハロウィンパレードと神輿がどんなコラボレーションを生み出すのか、なかなか想像がつかないが、地域が一体となって大いに盛り上がることは間違いなさそうだ。

2018.12更新(取材・動画/砂山幹博 写真/宮坂恵津子)