取材リポート 社協と協力して
高齢者宅に弁当配達

社協と協力して高齢者宅に弁当配達

新潟県中越地方、日本海に面した出雲崎町は、僧侶・良寛の出生地として知られている。近年は、先日活動休止を発表したアメリカ人演歌歌手ジェロのデビュー曲「海雪」の舞台としても有名だ。海岸沿いには佐渡金山の荷揚げや北前船の寄港でにぎわった往時をしのばせる妻入りの街並みが残り、観光名所となっている。

9月25日、そんな出雲崎町にある保健福祉総合センターふれあいの里にはおいしそうな匂いが立ち込めていた。

これは出雲崎町社会福祉協議会が実施している給食サービス事業だ。この事業は、1997年から始まった。その年、出雲崎町保健福祉総合センターふれあいの里が完成し、社会福祉協議会の事務局が拡充したことから、新たな事業を実施することが決まったのだ。そこで選ばれたのが弁当を配達するこの事業だった。業者の弁当を手配することもあるが、基本的には地元のボランティアに食事を作ってもらい、それを1人、もしくは2人で暮らしている75歳以上の高齢者に届ける。高齢者の安否確認に加え、配達してきた人と会話をすることで、孤立感を解消しようという狙いだ。

食中毒の危険性があるため、8月は実施していないが、それ以外の月は毎週火曜日に配達をしている。2018年度は年47回実施する予定である。

出雲崎ライオンズクラブ(田中秀和会長/24人)は社会福祉協議会の要請を受け、このうち毎年26回程度、配達の手伝いをしている。ライオンズクラブがこの配達ボランティアに参加することになったのは、調理ボランティアにメンバーの妻がいたことがきっかけだ。配達のボランティアが足りないことがクラブに伝わり、1999年から協力が始まった。以来19年間、毎年実施している。

今年9月に総務省が発表した人口推計によると、65歳以上の高齢者は全国総人口の20.7%に上った。国民の5人に1人が高齢者であり、割合、人数共に過去最多となった。新潟県に目を向けると、県人口に対して高齢者の占める割合、いわゆる高齢化率は31.8%に上る。特に出雲崎町は42.2%で、県内では阿賀町、粟島浦村に次いで、3番目に高齢化率が高い町となっている。こうした背景から、配達のボランティアも年々高齢化が進み、ライオンズクラブによる配達手伝いの回数は増えてきているという。

この日は昼過ぎから、調理ボランティアの面々が調理を始めた。今回は61食分を用意した。それをライオンズクラブのメンバーを含めた配達ボランティアに振り分ける。調理ボランティアの人たちも車に一緒に乗り込み、高齢者の家に向かう。ライオンズクラブのメンバーが担当したのは海沿いの妻入りの街並みの辺り。弁当を受け取った男性はうれしそうに感謝の言葉を述べていた。基本的に配達ボランティアの自宅近くの高齢者宅に弁当を届けるシステムになっているため、利用者と顔見知りのことが多い。

多くの人を笑顔にするこの事業。ライオンズクラブでは今後も社会福祉協議会と協力して、継続していきたいと考えている。

出雲崎ライオンズクラブは今年11月10日に結成50周年記念式典を開催する。人口約4500人という小さな町において、ライオンズクラブが50年間活動を続けてくることが出来たのは、こうした地道な事業をコツコツと積み重ねてきたからに他ならない。

2018.10更新(取材・動画/井原一樹 写真/関根則夫)