取材リポート 御船と天草の子どもの
交歓キャンプ

御船と天草の子どもの交歓キャンプ

8月2日から3日にかけて、熊本県御船町にある吉無田高原緑の村キャンプ場で、御船ライオンズクラブ(増田安至会長/52人)と天草を拠点とするパールライン ライオンズクラブ(渡辺紀生会長/28人)が主催する青少年健全育成交歓キャンプが行われた。これは、両クラブが姉妹提携をしたのがきっかけで始まった事業だ。

1986年、姉妹提携をした両クラブは、合同例会を行い、交流を図ってきた。しかし、せっかく姉妹提携クラブなのだから、交流だけではもったいないという意見がメンバーから出始める。ライオンズクラブの基本は奉仕活動。合同で何かをしようという結論に至るのに時間はかからなかった。

合同事業を行うに際し、キャンプのアイデアが出た。山の町である御船の子どもたちと、海の町である天草の子どもたちを集め、1年ごとに御船と天草とで交互にキャンプをし、それぞれの環境にまつわる体験をするものだ。結成当初から環境保全と青少年健全育成を柱として奉仕活動を続けてきた御船ライオンズクラブにとっては、まさに二つの柱の融合のような事業だと感じた。

以来、毎年キャンプを続け、今回は30回目を数える。内容は年によってまちまち。1年ごとに御船、パールライン両クラブがそれぞれ趣向を凝らして実施している。環境も重要なテーマとして位置付けているため、講師を呼んで講義を行ったこともあった。子どもたちの参加費は無料。全て両クラブで費用を負担する。

今年の担当は御船ライオンズクラブ。実は2015年と16年はパールライン ライオンズクラブに担当してもらっていた。熊本地震の影響だ。毎回使用していた緑の村キャンプ場も被害を受けていたのだ。今も宿泊棟であるバンガロー10棟のうち、6棟しか使えない。2017年夏もまだ緑の村キャンプ場はキャンプを行える状態ではなかった。それでも、3年続けてパールライン ライオンズクラブにお願いするわけにはいかないと、隣町で実施した。そしてようやく今年、安全確認をして御船での開催にこぎつけたのだ。双方の町から約40人の子どもたちと、御船、パールライン両ライオンズクラブの面々が参加。御船レオクラブの高校生たちも運営に協力してくれた。

子どもたちはまず吉無田水源に移動。川遊びと魚のつかみ取り体験をした。ここは毎時約500tの水が湧き出る県内屈指の水源だ。くまもと名水百選に選定されている水源だが、実は肥後藩が計画的に植林した結果生まれたものである。1832年から32年間で240万本を植林し、湧き水が出るようにした一大事業の産物だ。透き通った水の中で子どもたちは全力で楽しんでいた。

キャンプ場に戻った子どもたちを待っていたのはクラブ・メンバーが用意したカレーとヤマメの塩焼き。最初は知らない者同士だった子どもたちもすっかり打ち解けている。食後は散歩をして夕日を見に行く。吉無田高原から見る景色は絶景だ。薄紫に染まる空をバックに鬼ごっこをしたり、遠くの山に向かって大声を出したり。

日が落ちればキャンプファイヤーだ。火種を持ってくるのは御船レオクラブのメンバー。火の神様に扮した女子が班長をしている子どもたちの持つたいまつに火を灯していく。子どもたちは、班長が全員でつけた櫓の炎を囲みながら、新たに出来た友達と、夏の夜を楽しんでいた。

翌日は朝からバンガローなどの掃除をする。化石発掘体験では石の中から化石を見つけ、それを記念に持ち帰ることも出来た。アスレチックや、芝そり滑りなど、体を動かす遊びも満載。楽しく汗を流した後はかき氷を食べる。最後に、御船町恐竜博物館を見学し、1泊2日の行程を終えた。

クラブには後日、感想文が送られてくる。家族の方からは「帰ってきてからずっとキャンプの話をしているんです」と、子どもたちの喜ぶ様子も報告される。かつてこのキャンプに参加したことをきっかけに御船レオクラブに入る子もおり、子どもたちにとって、かけがえのない体験となっている。

2018.09更新(取材・動画/井原一樹 写真/関根則夫)