取材リポート 年に一度のお楽しみ
今年はストライク取れるかな

年に一度のお楽しみ  今年はストライク取れるかな

プロ野球チームの本拠地と同じ敷地内にある東京ドームボウリングセンターを会場に、今年も6月12日、「招待ボウリング」が開催された。招待されるのは、文京区内にある七つの通所施設の障害を持つ方々169人。年に一度のお楽しみとあって、開始前からワイワイガヤガヤと盛り上がりを見せていた。

今から20年以上も前のこと、東京中央ライオンズクラブ(外崎淳一2017-18年度会長/21人)のメンバーの間で、自分たちが障害を持つ人を雇用することになったらどのようにコミュニケーションを取れば良いか、ということが話題に上った。いろいろな意見が出たが、実際のところは経験してみないことには分からないだろうという声が多数。ならば交流の機会を作ろうと、障害を持つ人とメンバーが一緒に楽しめるボウリングに招待することになった。

「最初の頃は、クラブと縁のあった2~3の通所施設が参加して、障害者の方と我々ライオンズのメンバーが同じレーンでボウリングを楽しむというスタイルで行っていました」と話すのは、同クラブの渡辺雅史幹事。何度か実施していると、噂を聞きつけたのか「うちも参加したい」という施設が次々と手を上げた。
「参加した障害者の方は毎回、とても楽しそうにプレーしています。ですから、ライオンズと一緒に楽しむことよりも、出来るだけ多くの方たちに機会を提供しようと方向転換しました」(渡辺幹事)
 
そこで文京区役所の障害福祉課に相談したところ、全面的に協力してもらえることに。通所施設への呼び掛けなどの段取りを区が担当してくれることになった。障害を持っている方たちが主役のアクティビティなので、現場でどんなことが起こり得るかメンバーだけでは見当がつかず、以前は安全面の不安があった。施設スタッフの協力を得て万が一に備えてきたが、障害福祉課が間に入るようになってからは、障害者のケア面を任せられるようになった。その分ライオンズは会場の確保や、ゲーム中に各施設に配るお菓子やお茶の手配など運営面に注力している。

「障害を持った方が生き生きと楽しんでいる姿を見ると、我々も心を動かされます。この大会を通じてボウリングが好きになり、その後も継続しているという方も少なくないと聞きます」(渡辺幹事)

この日参加した施設の一つで、利用者に合わせた生活介護及び就労移行支援を行っている「は~と・ピア2」の松下功一施設長にも話を伺った。

「利用者の方の多くが、普段一人で黙々と作業をすることが多いため、皆で一緒に楽しむ機会があまりありません。ですので、旅行を企画する他、年に何度かイベントに参加していて、このボウリングもそんな機会の一つ。毎年利用させてもらっています。とにかくみんなこの日が来るのを楽しみにしています。今朝もある利用者さんが、親御さんに『今日はボウリングだよ』と声を掛けられただけで、いつもは起きてこないのに飛び起きてきたと聞きました。毎年参加していますから、利用者の腕前も少しずつですが上がっていますよ」

今回、は~と・ピア2からは10人が参加者しているが、参加希望者が多いということで、毎年交代制で参加をやりくりしているという。クラブとしてはより多くの人に参加してほしいという考えはあるものの、会場のキャパシティーには限界がある。この日も会場を2時間貸し切って、40あるレーンを全て使って開催しているので、これ以上参加者を増やしようがない状態だ。クラブでは実施回数を増やすことも視野に入れ、区役所や施設の方々と相談しながら、どうしたらより有効に楽しんでもらえるかを検討中だ。

レーンの方へと目を向けると、普段はあまり見せないというガッツポーズやハイタッチといった喜びの表現が、あちらこちらで見られた。
「年に一度でも、障害をお持ちの方が心から楽しめるということ、そして我々メンバーがそれを感じ合えるということが何よりも大切なこと。毎回、次の開催を期待されていますから、この機会を大切にすると共に、より広げていけるように努力してきたい」
渡辺幹事はそう話している。

2018.08更新(取材・動画/砂山幹博 写真/宮坂恵津子)