投稿リポート 子どもだけの祭
"小祢里"を支援

子どもだけの祭 “小祢里”を支援

子どもたちの夏休みが終了し2学期が始まった頃、夜町内を歩くと太鼓の音が聞こえてくる。ここ静岡県掛川市南西部の横須賀地区で毎年9月中旬に2日間にわたり開催される、中学生以下の子どもたちだけの祭典「小祢里(ちいねり)」のおはやしの練習である。

横須賀地区では毎年4月、三熊野神社大祭が開催され、各町内から14台の山車(地元では祢里<ねり>と呼ばれる)が参加する。祢里は5m余りの高さがあり、最上部には牛若丸と弁慶、上杉謙信と武田信玄など、歴史上の人物を精密に模した人形が乗っている。この祭ではやされる「三社祭礼囃子」は昭和30年に静岡県無形文化財1号に指定され、大太鼓・小太鼓・篠笛・摺鉦(すりがね)の演奏に乗せておかめやひょっとこが舞う。

三熊野神社大祭のミニ版と言われる小祢里では、全てを子どもだけで取り仕切る。祢里に飾る花やPRポスターも、子どもたちが保護者や青年部らの指導を受けて製作する。子どもたちは町内ごとにい組・ろ組・は組という組名が染め抜かれた法被を着、幹事・副幹事・会計等の責任者を決めて、進行時間や順番、千秋楽の行事まで自分たちで企画・実行する。大須賀ライオンズクラブ(大石與志登会長/29人)は保護者たちと共に祭当日の交通整理を行い、休憩場所や食事等の手配をし、けがのないよう注意を払うなど、裏方として子どもたちを支える。

この祭では中学生が小学生を指導する。学年を超えた縦の交友を深め合うことで、青少年の健全育成にも大きな成果が上がっている。そうしたことから、「地域を育てる子供達」と題して小祢里を紹介する文章が小学校の副読本に掲載されたこともあった。ただ近年は、少子化と核家族化の進行により自町の小中学生だけでは人手が足りないため、近隣町内からの友人等の応援も求めるようになった。

小祢里の手本である三熊野神社大祭は、江戸時代、第14代横須賀城藩主西尾隠守忠尚公が参勤交代の折、江戸神田祭の囃子を家臣に習わせ、横須賀に持ち帰ったのが始まりとされる。これが横須賀固有の調子をあしらって現在に伝えられ、300年余の歴史ある伝統的な祭となったことは感慨深い。今も江戸天下祭開催の折には東京から招待を受け、祢里と共に横須賀地区から老若男女約1,000人が上京する。県下で特筆すべき、地域の交流を深める祭典である。

 いにしえの お江戸の町の天下祭
  今も いきづく ここ横須賀に!!

2018.06更新(水野幸雄)