テーマ 月2回こども食堂を運営し
クラブを挙げて子育て支援

月2回こども食堂を運営し クラブを挙げて子育て支援

月2回オープンするライオンズこども食堂
3月4日、岩手県盛岡市西青山の青滝旅館で、盛岡観武(みたけ)ライオンズクラブ(三上誠会長/59人)の「こども食堂」が開かれた。同クラブのこども食堂は2017年3月にスタート。以来月2回のペースでオープンしている。

こども食堂世話人として、運営の中心となっているのは、ライオンズクラブで東北6県の家族及び女性チーム(FWT)のコーディネーターを務める同クラブの矢羽々睦子さん。会場となっている青滝旅館のオーナーでもある。同クラブがこども食堂に取り組むことになったのは、矢羽々さんがFWTの活動を通して得た情報がきっかけだった。

FWTは2014年に発足し、日本では女性会員や家族会員にふさわしい活動として、子どもたちに対する奉仕を主要目標の一つに掲げた。これを受け、矢羽々さんはライオンズを始め各種のセミナーやシンポジウムに積極的に参加。その一つ、16年3月15日に東京で開催されたシンポジウムは「あなたが出来ることを探しにきませんか?~みんなで支える地域の子ども~」と題して行われ、食や教育など実際に子どもたちを対象に活動をしている9団体が事例発表をした。

その後、矢羽々さんはシンポジウムでの発表をヒントに、ライオンズクラブの会合などで「ライオンズのお母さんたちによる子どもの居場所づくりに取り組もう」とアピール。こども食堂の立ち上げも念頭に置きながら、精力的に活動を展開した。更に、既に取り組みを始めていた盛岡のこども食堂から運営のノウハウなどを学んだ上で、年が明けた17年2月のクラブ理事会に、こども食堂の開設を提案。クラブにもそのつど報告し情報を共有していたため、スムーズに理事会承認が得られ、3月からのオープンにこぎ着けることが出来た。

こども食堂は、東京都大田区の八百屋「だんだん」の店主近藤博子さんが名付けたプログラム。「だんだん」のこども食堂は、子どもが一人でも安心して来られる低額の食堂として開設された。こども食堂はよく「子どもの貧困問題」とリンクさせて語られるが、「だんだん」の場合は孤食を防ぐことを目的に、子どもの居場所づくりとして始まったもので、「貧困家庭の」とは一度もうたったことがないし、実は「子ども」にも限っておらず、親はもちろん地域のお年寄りが参加しても構わない。

盛岡観武ライオンズクラブのこども食堂も、「だんだん」型の共生食堂の性格を持っている。その中で毎回、盛岡大学短期大学部幼児教育科の岩崎基次准教授と学生たちがボランティアで学習支援や遊びの相手をするなど、専門的なプログラムも提供されている。

また、子育ての先輩として若い母親の相談に乗ったり、子どもたちへ読み聞かせや昔話、手話、ひちりき演奏を披露したりと、会員たちもそれぞれの得意分野で貢献。ただ集まって食事をする場ではなく、「大人と子どもが一緒になって楽しく過ごす場」として、こども食堂自体も回を重ねるごとに参加者と共に成長している。

こども食堂を子育て支援の拠点に
盛岡観武ライオンズクラブのこども食堂は基本的に月2回、日曜日か祝日の午前11時半から15時の予定で開設している。参加費は子ども100円、大人500円。当初、子どもたちは無料にすることも考えたが、学校からのアドバイスで、子どもたちにも少額を負担してもらい、ご飯とみそ汁はおかわり自由、おかずも自分で好きなだけ食べていいバイキング形式にした。

こども食堂の運営には学校との連携が不可欠と考えた盛岡観武ライオンズクラブは、以前からクラブの事業で交流があり、会場の青滝旅館に近い月が丘小学校と提携して児童たちにチラシを配布してもらっている。また、市会議員の会員が青少年関連の団体などを通じて配布に協力してくれているため、最近は遠方からも参加して来るようになったり、会場となる青滝旅館のドアに貼られたこども食堂のチラシを見て親子で参加したりといったケースも見られるようになった。これまで延べ20回以上実施しており、毎回子どもたちを中心に20〜30人が参加。多い時には50人近くが参加したこともある。

常連組の子どもたちは開始時間を待たず、10時ぐらいから集まり始め、本を読んだりゲームをしたりして、それぞれ好きなことをして過ごす。ボランティアで参加している大学生のお姉さんにまとわりついて離れない子や、ヒーローごっこかライオンズのおじさんにぶつかっていく子、食堂で知り合った新しい友達と旅館内を走り回る子と、子どもたちは勝手知ったる我が家のように、安心して自由に動き回っている。その間、ライオンズクラブのメンバーたちは、旅館の厨房を使って子どもたちが喜ぶメニューを調理。

「中には、指折り数えて待ってたよ−、と抱きついてくる女のお子さんもいらして、こども食堂を通して子どもたちから力をもらっています」と、調理を担当する同クラブ今年度会計の室岡澄子さんは話す。大勢の子どもたちの笑顔と「おいしい」の一言が、月2回のボランティア活動の励みになっている。

こども食堂を始めてから、クラブにも変化が出ている。昨年来、子育て世代の若い会員の入会が相次ぎ、こども食堂には親子で参加するなどしている。また、一度本誌でこの活動が紹介されたことで、全国のライオンズから注目され、取材した日も青森のライオンズが視察に訪れていた。更には、地元の盛岡はもとより、山形や徳島など県外のライオンズから食材の提供があるなど、こども食堂の運営に携わる会員たちを勇気付けるような出来事が続いている。

世話人の矢羽々さんは「今後は地域の老人クラブにも声を掛け、さまざまな世代がつながる場を作りたい」と話す。ライオンズだけではなく、多くの人たちが「こども食堂」に関わり、みんなで子どもたちを見守るようになれば、地域にとっても大きな力になるに違いない。

2018.04更新(取材/鈴木秀晃 写真・動画/宮坂恵津子)

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