フォーカス 町ぐるみで取り組む
カンボジア学校支援

町ぐるみで取り組むカンボジア学校支援

幸田ライオンズクラブがカンボジア・シェムリアップ州にあるトラキエット小学校の校舎建設に着手してから、今年で10年になります。子どもたちの輝くような笑顔に会いたいと、これまで毎年小学校を訪問して交流を続けてきました。今年からは幸田町と幸田町国際交流協会、ライオンズクラブによる合同事業として、地元の高校生を派遣することになり、3月22日から6泊7日の日程でカンボジアを訪問しました。

私が初めてカンボジアを訪れたのは2004年です。その前年、ライオンズクラブ国際財団(LCIF)の資金援助で実施された開発途上国での支援事業を視察するスタディ・ツアーが始まって、同じクラブの山本冨夫さんを誘って参加しました。ライオンズクラブは国際協会なので、国際的な奉仕活動に取り組むのは重要なことだと考えていたからです。そのLCIFスタディ・ツアーで2回目に訪れたのがカンボジアで、この時に茨城県・下館ライオンズクラブが建設した小学校の竣工式に出席して、子どもたちのキラキラと輝く瞳にすっかり魅了されました。

巡り合わせというのは不思議なものです。翌2005年に愛知県で開かれた愛・地球博の「一市町村一国フレンドシップ事業」で、幸田町はカンボジアとパートナーシップを結んだのです。我が町の友好国のために何か出来ることはないか? カンボジアで味わったあの感動を幸田ライオンズクラブでも体験出来ないか? そんな思いから学校建設に取り組むことにしました。支援先に決まったトラキエット小学校へ下見に訪れると、子どもたちは古い木造校舎とバナナの葉で屋根を葺いた粗末な教室で勉強していて、雨季には教室が使えなくなるという話でした。この小学校に新校舎を1棟建設するという計画で、これは小さな町の小さなクラブにとって大きな挑戦でした。

校舎完成までには多くの困難がありました。着工時期が現地のホテル建設ラッシュと重なって建設費用が予定をオーバーする事態に陥りましたが、国際交流協会を始めとする町内の団体や小中学校が募金に協力してくれました。新校舎が完成したのは2009年2月です。それから年1回の訪問時には、町内の小中学校から寄贈してもらった中古の楽器や、募金で用意した学用品を子どもたちへ届けて交流してきました。8年前からはメンバーの夏目一成さんの次女でフルート奏者の佳枝さんが子どもたちに音楽を教えてくれて、今では立派な楽隊が出来ています。会員数20人ほどのクラブでこうして支援を続けてこられたのは、町民の皆さんの協力で町ぐるみの活動に発展させることが出来たためだと思います。

今回の派遣事業で、幸田町の高校生たちはライオンズが以前から行っているトラキエット小学校の運動会や文化交流会、修学旅行に参加しました。中でも運動会は、学年別の競技の企画から準備、実行まで彼らの手で行いました。昨年夏に公募で選ばれた高校生10人は、派遣までの半年間で十数回にわたり事前学習会や準備を重ねました。その指導には、現在は家族会員としてクラブの一員になった夏目佳枝さんが当たり、彼らの個性を生かしながら、時に厳しく、温かくサポートをしてくれました。

高校生たちが考えた競技の中には説明するのが難しいものもあって、出発前のシミュレーションを見た時にはどうなることかと心配していました。結果は出来過ぎと言っていいほどの大成功。彼らは、言葉の通じないカンボジアの子どもたちと何とかして気持ちを通わせようと奮闘していました。この半年で多くのことを学び、大きく成長した高校生たちを、とても誇らしく思います。

2018.04更新(取材・構成/河村智子)

おやま・たけし 1939年、東京・浅草生まれ。仕事の関係で愛知県額田郡幸田町に移り住んで以来、長年にわたってボーイスカウト、ガールスカウトの育成など地域のボランティア活動に熱心に取り組んでいる。1982年11月幸田ライオンズクラブ入会。2007年に始まった幸田ライオンズクラブのカンボジア学校支援事業では常に中心的役割を果たしてきた。今年度は3回目のクラブ会長を務めている。