取材リポート 留学生たちに日本文化を。
おせち作り体験実施

留学生たちに日本文化を。おせち作り体験実施

2018年1月21日、京都グレース ライオンズクラブ(竹内まゆみ会長/22人)のメンバーがきょうと留学生オリエンテーションセンターさつき寮に集まった。この日は地域のもちつき大会の日。京都グレース ライオンズクラブでは毎年、この日に合わせて留学生におせち作り体験をしてもらっている。対象は会場となったさつき寮と、きょうと留学生オリエンテーションセンターが他に運営しているみずき寮に入寮している留学生30人だ。

京都グレース ライオンズクラブは結成4年目のクラブだ。メンバーは女性だけ。結成当初から、何か女性らしいアクティビティが出来ないかと考え、模索していた。そんな中、京都府の留学生課からさつき寮を対象とした事業の打診があり、この事業の実施を思いついた。

さつき寮に入寮している留学生の多くは大学院生や大学生だ。ハイレベルな研究室にいると、周囲も英語が話せて当たり前。そのため、特に日本語を覚えなくとも勉強が出来る環境にいる人も多い。また、寮生活をしているため、日本の文化に触れる経験も少ない。そこでクラブでは、家庭の雰囲気を味わえるアクティビティを実施したいと考えた。

留学生が地域のもちつき大会に参加していると聞き、雑煮をメニューに載せている飲食店は少ないため、食べる機会がないのではないかと思いついた。それならば日本の正月文化を伝える会に出来たらと考え、一緒におせち料理を作るという現在の形になった。

京都のお雑煮と言えば白みそだが、留学生にとっては慣れない味であるため、関東風に変更するなど細かいところも意識して実施している。また、この事業ではただ作って食べるだけではなく、盛りつけなども含めて日本の食文化を伝える工夫もしている。今期会計の鈴木千鶴子が翻訳業を本業としているため、英語で当日作るおせち料理のお品書きを作成。どういう料理かを説明するのはもちろんのこと、「黒豆は『まめに働く』とかけている」など、なぜ正月にこの料理を食べるのか、という由来についても解説した文章を配布した。

料理の下ごしらえはメンバーが行う。30人分ともなると、普段家で作る量とは比べ物にならない。メニューによっては前日からの仕込みが必要なものもある。それでもさすがは女性クラブ。手分けをしてどんどん進めていく。

留学生はさまざまな宗教や文化圏から来ているため、メニューにも気を使う。イスラム教で許されている食品から食材を選び、ベジタリアンにも配慮する。アルコールが入っていてもいけないので、原材料もチェックしなければならない。こうした関係で、留学生一人ひとりに小さなお重を用意。自分が食べられるものだけを詰めて食べてもらうスタイルにしている。このお重を渡すやり方は見た目が華やかになり、留学生からも大好評だという。

もちつきから帰ってきた留学生はクラブが用意したエプロンと三角巾を着用。初めての体験に大興奮の留学生たち。お互いに写真を撮り合ったり、料理について質問したりしていた。しかし、料理を作る際は真剣なまなざしに。男子も慣れない箸を使いながら薄焼き卵を焼いたり、茶巾絞りを奇麗に整えたり。英語が得意ではないクラブ・メンバーも身振り手振りでコツを伝授。コミュニケーションの輪が広がり、誰もが楽しい時間となった。

京都は近年、外国からの観光客が増えており、京都に住んでいる人は外国人と触れ合う機会が多くなっている。しかし、観光客ではない外国人との交流は少ない。そのため、メンバーにとっても刺激のあるアクティビティとなっている。

留学生にとっても、メンバーにとっても、異文化交流の大切な時間となるこの事業。クラブでは毎年継続し、日本の食を含めた文化を伝えていこうと思っている。

2018.03更新(取材・動画/井原一樹 写真/関根則夫)