取材リポート 豪雪地帯ならではの事業。
独居高齢者宅で雪下ろし

豪雪地帯ならではの事業。独居高齢者宅で雪下ろし

北海道石狩平野の最北に位置する深川市。この近辺は豪雪地域対策特別措置法によって特別豪雪地帯に認定されていることから分かるように、冬は雪が多く、気温も低くなる。北海道屈指の厳しい環境になる地域だ。11月半ばくらいから3月上旬くらいまで、ほぼ毎日雪下ろしをしなければ、すぐに家が埋まってしまう。深川駅付近に当たる市街地は積雪もそこまで多くはないが、車で少し走ると2m近い雪が道路脇にそびえるような景色が見えてくる。

2018年2月3日、そんな深川市の鷹泊地区に深川ライオンズクラブ(笹渕哲央会長/24人)の面々が集まっていた。目的はこの地域の独居高齢者宅の雪下ろし。玄関部分や、道路に出るまでの通路は除雪がされているが、家の1階部分はすっぽり雪に覆われてしまっている。

この日の目標は1階の窓の部分まで雪を取り除き、日光が入るようにすること。今年は深川西高等学校の野球部員たちが協力してくれることになったので、2棟の除雪をする。ただし、危険が伴うので、屋根の除雪は極力しないようにしている。

除雪には体力が必要だ。雪は深く、踏み固められていないため、家の側面に回り込むのも一苦労。雪かき作業をしていると、だんだん体が沈んでいってしまうので、動きながら少しずつ取り除いていく。深川ライオンズクラブの会員数は24人。40代が8人、50代が8人、60代が8人と、ライオンズクラブ全体の平均年齢よりはいくぶんか若いクラブだ。だが、普段から鍛えている野球部でさえきつそうな表情を浮かべるこの作業。メンバーの顔も疲労の色が濃くなっていく。

メンバーは経営者が多く、普段は雪下ろしなどをする立場にない人も多い。だが、だからこそクラブでは労力アクティビティを重視したいと考えている。自らが汗を流して行うことで、奉仕の大切さを再確認する良い機会にもなっている。

深川ライオンズクラブは以前から高齢者を対象としたアクティビティを実施してきた。まだ福祉が充実していなかった頃は寝たきりの高齢者宅を訪問し、シーツや寝間着をプレゼントして、話を聞くなどしていた。多くの人に喜ばれていたが、その後に福祉が充実。このアクティビティ自体、一区切りがついた。そこで寝たきりに限らず、高齢者を対象とした事業を拡大し、越冬準備や植木の囲いなどを実施するようになった。そして、20年ほど前から雪下ろしがメインの事業となっていく。

かつてはメンバーの個人的なつながりや、入ってくる情報に基づいて対象の家を決めていた。しかし、時代が変わり、独居高齢者が増えてきた現在では、個人的な情報だけではどこが困っているのかが分かりにくい。そこで市の社会福祉課に要望のある独居高齢者宅を教えてもらい、実施するようにしている。

この事業を実施する際に重要なのが事前調査だ。雪下ろしと一言で言っても、その家その家によって状況は異なる。重機を使える場所なのか、スノーダンプなどが適している場所なのか。また、駐車場の有無など、現地調査をして見極める。

こうした苦労はあるが、対象となった家の方からの感謝も大きい。甘酒やお茶を出して歓待してくれる人もいる。また、深川ライオンズクラブの雪下ろしを扱った新聞記事を読んだ深川東高等学校の生徒が、「良い事業だから自分たちもやろう」と、自主的に除雪作業を実施するなど、クラブの活動が地域に広がってきているという。

今後もニーズがある限り、クラブでは雪下ろし事業を続けていこうと考えている。しかし10年後を考えた時、自分たちのクラブがどうなっているのか。会員減少や平均年齢の上昇について真剣に考えなければならない。昨年は青年会議所が、今年は深川西高校の野球部が協力してくれたこの事業。地域の他団体との連携を図りながら、まずは毎年実施していくことを目標にしている。

2018.03更新(取材・動画/井原一樹 写真/関根則夫)