取材リポート 鵜戸神宮に寄贈した
ベンチの清掃と維持活動

鵜戸神宮に寄贈したベンチの清掃と維持活動

宮崎県南部に位置する日南市。1950年に4町村の合併により誕生し、その後もいくつかの町村が編入し、発展してきた。合併によって生まれたため、地区によって違った風土があり、多様性のある市となっている。

そのうちの一つ、鵜戸地区には、県内外から多くの人が訪れる鵜戸神宮がある。岩窟内に建てられた本堂は極彩色で県の有形文化財に指定されている。本殿前にあるのが、『古事記』などに登場する女神の豊玉姫が海神宮から来た際に乗ってきた亀が石になったとされる亀石だ。石の頂に枡形のくぼみがあり、「運玉」と呼ばれる玉を投げ入れることが出来れば、願いが叶うとされている。このように、県外の人からはパワースポットとして人気があり、地元の人にとってもなじみが深い場所である。

そんな鵜戸神宮に日南ライオンズクラブ(山口和彦会長/25人)がベンチを寄贈している。最初に寄贈したのは1994年のことだ。現在、社務所側の入り口近くと、本堂の近くの2カ所に設置してある。材料は日南市の特産である飫肥杉(おびすぎ)を使用した。古くから造船などに使われており、雨風にも耐えられる性質を持った飫肥杉と言えど、次第に劣化は進む。そこで、1999年には防虫剤を注入したものを新たに寄贈した。それでも定期的なメンテナンスは欠かせない。

そこでクラブでは毎年年末にベンチの塗り直しと、周辺の清掃を実施している。2017年は12月10日に行った。

晴天の下、手順を確認した後、作業を開始する。毎年塗り直していても、ベンチには傷が増えていく。多くの人に使われている証拠だ。傷には風で飛んだ小石が詰まっているので、まずはその小石をかき出さなければならない。これがなかなか大変な作業だ。ずっとしゃがんだ姿勢なので腰も痛くなるが、メンバーは懸命に小石をかき出していく。こうして小石がなくなれば、次はぞうきんがけだ。防虫・防腐剤の塗り直しの前にベンチを奇麗にしていく。塗り直しははけで丁寧に行う。丸太を使用した大きなベンチであるため、面積も広い。下の方は塗りにくいところもあり、苦労する作業だ。塗り終わった後はベンチの周囲をヒモで囲い、「ペンキ塗り立て」と注意書きをつける。そのままの状態で3日ほど乾かせば、完成だ。

活動にはメンバーの家族も一緒に参加する。子どもたちも真剣に小石を取ったり、ぞうきんがけをしたりしていた。家族ぐるみでの奉仕活動をする貴重な機会でもあり、同時に、地元の人にとってシンボル的な場所の清掃活動はメンバーにとって誇りに思える活動だ。

日南ライオンズクラブが鵜戸神宮に対して行った奉仕活動はベンチの寄贈だけではない。表参道側の入口近くにはジャカランダの木を植樹。初夏には奇麗な花を咲かせ、参道を行く人々の目を楽しませている。

また、鵜戸神宮にある磨崖仏(自然の岩壁や岩に造立された仏像のこと)の説明板も日南ライオンズクラブが寄贈した。この磨崖仏は18世紀半ばに鵜戸山仁王護国寺の第47世の別当隆岳が仏師延寿院に彫らせたもので、1970年11月に日南市の文化財(彫刻)に指定された。車道横の少し目立たない場所にあるため、説明板がなければ、ちゃんと見ようと思う人は少ないだろう。しかし、「ものを寄贈して、それで終わり」というのでは奉仕活動ではなく、自己満足になってしまうという考えから、クラブでは毎年、ベンチの塗り直しに合わせて、ジャカランダや磨崖仏の周辺も清掃している。

広大な敷地を持つ鵜戸神宮。複数の箇所で維持管理活動や清掃活動をするのはなかなかに大変だ。ベンチを寄贈する際も材料を奥まで持って入るのは重労働だったという。それでも今は訪れた人たちに喜ばれるベンチとなっている。

今年も多くの人が鵜戸神宮を訪れ、日南ライオンズクラブの寄贈したベンチに座ることだろう。

2018.02更新(取材・動画/井原一樹 写真/関根則夫)