取材リポート 商業祭りいがっぺ市で
バザーと舞茸汁の無料配布

商業祭りいがっぺ市でバザーと舞茸汁の無料配布

茨城県南部に位置する龍ケ崎市は東京都心から45kmの場所に位置している。1970年代後半から竜ヶ崎ニュータウンが開発され、ベッドタウンとして90年代後半には人口が急増。95年には人口増加率で全国2位になるなど、急速に発展してきた市である。2003年からはコロッケによる町おこしを始めており、佐貫駅と竜ヶ崎駅を結ぶ関東鉄道竜ヶ崎線では16年9月からつり革に本物そっくりのコロッケをつり下げた車両を運行している。

ここまでを読んでもらっても分かるだろうが、市内には「龍ケ崎」と「竜ヶ崎」の表記が混在している。これは、市では「龍」の文字を使い、県は常用漢字を使用することになっているため「竜」の文字を使っていることが原因の一つだ。市では「龍」に統一させたいと考えているが、既に取り付けられている看板の架け替えなど費用の問題もあり、なかなか難しいのが現状だ。

2019年には国民体育大会と全国障害者スポーツ大会が開かれ、20年の東京オリンピックでは柔道のオセアニア地域代表、キューバ代表チームの事前キャンプ地にもなるなど、スポーツが盛んな市でもある。17年のJリーグの新人王に当たるベストヤングプレーヤーを受賞した中山雄太選手や、初場所で初優勝をし、横綱に昇進した稀勢の里関も龍ケ崎市で幼少期を過ごしている。

毎年11月23日、竜ヶ崎駅前の龍ケ崎市商店街大通りを歩行者天国にして「龍ケ崎商業まつり いがっぺ市」という商業祭りが行われる。「いがっぺ」とは茨城の方言で「いいんじゃない」という意味だ。多くの店が出て、ダンスパフォーマンスなどさまざまなイベントが行われる。かつては「びっくり市」「4万人のふれあい」と呼ばれるなど、祭りの名前はいろいろと変わってきたが、昔から地元の人にとって秋の風物詩となっているお祭りだ。

17年に結成35周年を迎えた竜ケ崎ききょうライオンズクラブ(本下幸彦会長/36人)も、毎年いがっぺ市に参加している。クラブではバザーと、舞茸汁の無料提供を実施。いがっぺ市への参加はクラブ結成当初から30年以上続いているメイン事業であり、メンバーも気合いが入る大事な日だ。しかし、今年(2017年)は残念ながら土砂降りの雨。更に冬型の気圧配置によって、息も白くなる寒い朝となった。それでもライオンズのメンバーは寒さにも雨にも負けず、準備を進める。

クラブがこのいがっぺ市に参加し始めたのは商工会からの協力要請があったからだ。以来、バザーを出店して参加を続けてきた。それに加え、つくばの里まいたけセンターの所長であった長浜善夫が担当委員長になった10年ほど前から、舞茸汁の提供も行っている。

舞茸は他のきのこと比べてもうまみ成分を多く含み、だしがよく出ることで知られている。また、香りも高く、栄養成分も豊富であるが、水に溶け出してしまうため、汁物で食べるのが良いとされている。

センターの舞茸は肉厚で市販のものとはひと味もふた味も違うという。訪れた方も「全然違う。だしが効いていておいしい」と舌鼓を打っていた。

土砂降りで他の屋台が閑散とする中、ライオンズのブースでは人が切れることがない。それでも例年と比べれば随分と少ないと言うから、人気のほどがうかがい知れる。用意した500食は次々と地元の人の口の中へ。この日も13時には大鍋が空になった。今回は天気が悪かったため、500食にしたが、例年は千食。それでも毎年13時頃には無くなってしまうという。

クラブでは舞茸汁を受け取った人に茨城県アイバンクなどへの募金を呼び掛けている。最初はなかなか入れてもらえなかったが、年を重ねるごとに、定着してきた。今では小さな子も積極的に協力をしてくれる。地域に募金の習慣を根付かせることも、クラブの目的の一つであり、それも徐々に達成されつつある。

バザーの商品の中には、メンバーが本業で扱っている農作物や花などの品物もあり、人気が高い。質の良い物が安価で手に入るとあって、次々に人が訪れる。「こりゃいいもんだから」「こんなのこの値段じゃ絶対手に入んねぇって」と、メンバーは宣伝に余念がない。地元の人は「雨なのにこんなに持って帰れないよ」と言いながら、たくさん買って帰る。口では文句を言っても、その横顔はうれしそうだ。このバザーの人気も高く、舞茸汁と同じく、昼過ぎにはいつも売り切れると言う。毎年10万円〜20万円ほどになる収益金は、全て盲導犬協会などに寄付している。

クラブと地元の人を強く結びつけるいがっぺ市。毎年楽しみに来てくれる常連さんも増えてきた。ライオンズクラブのことも地元で浸透しており、良いPRにもなっている。クラブでは今後もこの事業を続けていきたいと考えている。

2018.01更新(取材・映像/井原一樹 写真/関根則夫)